第一回(へいへいほう11月号より)
当社は、 ご存知のように高気密高断熱住宅の建築を得意とする会社です。この「へいへいほう」紙上でも断熱について、機会あるたびに様々述べてきました。どうしても話の性質上というか、当社の性格上と言うか、専門的な話題になりがちであったように思います。
 最近は、「高気密高断熱」とか「次世代省エネ基準」とか「Q値」とかいう言葉も、各社の広告で出よく見かけるようになりました。各社様々な比較広告を行っていますが、なかには「明らかに嘘」(と思われる)表現や「いかがなものかな」と言う広告がある場合を見受けます。これではお客様も混乱してしまうに違いないと思い、もう一度基本に立ち返って、断熱のことをお話してみようと思い立った次第です。
■家の断熱性能を上げるには
 家の断熱性能を上げるというのは、言い換えると「家から逃げていく熱の量を減らす」と言
うことです。図1をごらん下さい。

図1

家の中の熱は、壁から、天井から、床から(基礎から)、窓から、隙間から、外に逃げ出します。 これを減らす為にはさてどうしたら良いでしょうか?
「サッシを断熱サッシにする」(半分正解)
「断熱材の性能を良くする」(半分正解)
「断熱材を厚く入れる」(半分正解)
「家全体の隙間を減らす」(ほぼ正解)
「外断熱にする」(ほぼ不正解)
■断熱サッシにもいろいろ有る
 良く見る広告に「ペアサッシ使用 無結露」「内側樹脂の断熱ペアサッシ使用」等が有ります。 「断熱サッシを使っているのだから暖かいだろうな」と思う方も多いかと思いますが、ちょっと待ってください。表1を見てください。
表1 サッシの断熱性能 
(K値=熱貫流率 W/?K)


サッシの断熱性能は、ガラス、フレーム、サッシの形状等によってこんなにも違いが有ります。 同じ断熱サッシといってもその性能には大きな違いが有り、例えばAとBでは、2倍強の差が有ります。 ちなみに、ツーバイフォー工法における断熱材の入らない壁の平均K値は2.5です。この数値を超えるサッシは、この表で言えば、3種類しか有りません。 「シングルサッシよりましだから断熱サッシと言う」のでは時代に遅れています。「断熱サッシはそのK値を必ず聞いてみましょう」 尚、サッシ性能と結露は密接な関係にありますが、サッシ性能を良くするだけでは無結露は実現できません。その点は、 後に触れたいと思います。
■断熱材の効果=性能×厚み
これは、皆さん当たり前のことだとお思いでしょうが、案外引っ掛かりやすいんです。 先日ある社の広告にこう有りました「日本一の高性能断熱材使用」 ・・・どう思います?「すごい」と思った方いませんか? そう思った方、ここでこの項の小目次に戻ってください。
「断熱材の効果=性能×厚み」、つまり日本一高性能でも、「厚みが足りなければだめ」なのです。ここで
表2をごらん下さい。
表2 断熱材の性能
(λ値=熱伝導率 W/mK)

日本一の断熱材Aと最も普及しているグラスウールBの断熱性能は約2.5倍の差が有ります。 大きな差ですがBが100ミリ厚であれば、それに匹敵するにはAは40ミリの厚さを必要とします。「30ミリ厚の日本一の断熱材は100ミリのグラスウールに劣る」 と言う結論になります。この際、内断熱であるか外断熱であるかは無視していますが、こと断熱材の効果で言えばそうなります。
高性能の断熱材が開発普及することは、私ども建築業者にとってありがたいことで、それにけち付けようなどと微塵も思いませんが、
「断熱材の厚さの取れる箇所は、厚くとる」 というのが断熱施工の基本であることは今も変わっていないと言うことを再度確認したかったものです。

■断熱材の性能とコスト
世の中にコストと言う考えが無ければ、高性能の断熱材を厚く使えばそれで事足りるわけですが、 そうはいきません。常に「費用対効果」はシビアに検討されるべきです。
そこで、当社の使用している断熱材の「同じ断熱効果を実現した場合にかかる費用」を計算し、一番安価な物を100として比較して見ました。 同じ断熱効果で比べていますので、純粋に価格の差が表れます。
表3 は単に材料費のみの比較、表4 は壁への施工費を加算した場合です。
表3 同じ断熱効果に要する費用
(材料費 グラスウール10kを基準とする) 当社比

表4 同じ断熱効果に要する費用
(材料費+施工費 グラスウール10kを基準とする)
当社比 壁断熱の場合

材料費で見るとAとBとの比較が約4.5倍、施工費を含めると約6.7倍という数値になります。天井屋根断熱では施工費にもっと差が出ます (詳細は来週)。いずれにしても大きな価格差です。しかし、では厚さで性能を確保するのが全て良いかと言うと、一概にそうとも言えません。後にも述べますが 、断熱以外も含め建築全体として、費用対効果を検討する必要があります。結論としては
「断熱材の厚さの取れる箇所は、 厚くとる」「厚さの取れない箇所は、性能の良いものを使う、もちろん、コストをにらみながら。」 と言うのが当社が妥当だと考えている方法です。
今回はここまでで紙面が付きました。来月は、「隙間のこと」「断熱工法のこと」「Q値のこと」とかを基本に返って書くつもりです。
つい先日「当社の施工平均Q値=1.5」という某社の宣伝を見ましたが、
「Q値1.5は、そんな簡単な数字じゃない!」と銘打ってその検証も行いたいと思います。

次は『断熱工法と断熱性能』>>

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