第一回

●硬い地盤と軟弱地盤

 地盤や土地は、その土地ごとに色々な性質を持っていますが、その土地が何に利用されるかによって問題とされる土地の性質は、異なってきます。例えば、その土地が畑に利用される場合には、「水はけの良さ」「表土に石が混ざっていない」「土壌の酸性度」などが問題にされるでしょうし、水田で有れば、「水持ち」「土地の痩せた肥えた」などが問題になるのでしょう。では、住宅建設地には、どんな要素が問題とされるかと言えば、「水はけ」「浸水の可能性」「地滑り」などに加えて、「地盤の軟らかさ」があげられます。地盤の上に建物を建てるので、地盤がその建物の重さに耐えられないと、建物にとって重大なトラブルが発生してしまいます。ことに諏訪盆地は、全国のランキングにも入るような軟弱地盤地域を抱えていますから、真剣に取り組む必要があります。

●軟弱地盤と対策

 軟弱地盤という言い方をしますと、住宅地に適さないかのような印象を受けますが、決してそんなわけではありません。適切な対策を行いさえすればなんら問題は発生しないのです。
 適切な対策の手順としては、まず第一に調査です。地盤調査によって、その地盤の形質の概略を把握します。その後、この地盤に適した対策をいくつか提案し、費用対効果も考察の上いずれかの方法を決定します。このときポイントが2つ有ります。1つは、調査結果から対策を導いたプロセス、対策の安全率を施主様に分かりやすく説明する事。2点目は、費用が関係するので、どの方法を採るのかはお施主様と相談しますが、どの方法であっても安全度が、合格点に達している事(お客様が、「この程度でいいよ」と言ったとしても、その後問題の発生しそうな場合はOKできない)。 

●地盤調査

 地盤調査の方法にも、何通りか有ります。大きな建物の場合は、ボーリング調査と言ってかなりの深度までボーリングして、各層ごとの土のサンプルを採取して調査をします。  
 一般木造住宅の場合は、ボーリング調査をすると言う事はまずありません。木造住宅で良く行われる調査法は、1.スェーデン式サウンディング試験法(SS試験)、2.表面波探査法の2通りですが、当社は、SS試験によって調査をお願いしています(図1)



地表から5m位までの地盤の概要を調査する事が出来ます。このSS試験は、調査が比較的簡単であるのに対し、調査能力が優れているので、現在では、小規模建築物の地盤調査と言えばSS試験を指すほどになっています。しかし、注意点としては「地盤の事をよく解っている経験者が調査をすべきである」「自動計測では、手に伝わる感触による土質の判断が出来ない」などが言われています。 
 さてこの地盤調査によって明らかにしたい事は、「地耐力の数値」です。  

●地耐力

 地耐力という言葉は良く耳にします。「その地盤が、どれだけの荷重に耐えられるか?」を示した数値の事であり、1当たり何トン(t/)とか何KNとか表示します。
 地耐力は、地盤の支持力と地盤の沈下量の2要素によって決定されます。

 地盤の支持力は、SS試験の結果から計算でき、何t/の荷重まで地盤が破壊しないかを示した数値です。この数値は、実際の計算値に3倍の安全率を見込むことという決めごとがあります。
 地盤の沈下は、SS試験によって地盤沈下が予想される地盤に対して、何t/の荷重までなら許容沈下量(10cm)の内輪に収まるかを示します。
この両数値の内、低い数値の方を地耐力として採用します。図2を見て下さい。

 

 木造住宅の一般的な基礎である、布基礎と、当社で採用しているベタ基礎が図示されています。建物の荷重は同じでも、地盤に対してかかる力は、地盤に接する基礎の底面積によって変わります(これを接地圧と言います)。例えば40坪総2階の住宅で、布基礎とベタ基礎を比較した場合その接地圧は、ベタ基礎に於いて半減します。地盤の破壊(支持力)に関しては、この接地圧と支持力のどちらが大きいかがすべてですから、明らかにベタ基礎が有利になります。これがベタ基礎が軟弱地盤に強いと言われる理由です(地盤沈下に関しては、もっと複雑な要素が入ってきます)。この様に、地耐力は大きいにこした事はありませんが、基本的には、建物の自重との相対的な関係にあります。建物の自重を小さくする事は、地耐力を大きくしたのと同様な効果が有ると言えます。建物の自重、接地圧を明らかにして、初めて地耐力の数値が利用できるわけです。
地盤の支持力と、地盤の沈下に関して図3のように例えてみます。

 

 雪が降ってから3日ほど経った状態を想像して下さい。雪の表面は溶けた後凍って少し硬くなっています。この状態の支持力が安全率を考慮しないと、約2t/だそうです。ここに体重80Kgの、当社中川君がまず下駄でのります。下駄の歯は、両足で4本、1本の底面積は20×3=60。4本で240ですから、接地圧は、80Kg÷240=3.3t/。これは地盤(雪面)の支持力2t/を超えているので地盤(雪面)が破壊されます。「ズボッ」という音と共に雪の中に落ちてしまいます。対して20cm×30cmの歯のない下駄でこの雪面にそっとのりますと接地圧は0.7t/ですから、地盤(雪面)は破壊されず、雪面に立っている事が出来ます。これがベタ基礎に当たります。
 地盤沈下については、豆腐を例に取ります。豆腐の上に缶詰を置いた時、缶詰の縁が豆腐にめり込みます。これが、地盤(豆腐の表面)が破壊された状態です。ところが豆腐の上に板をのせて、その上に缶詰を置きますと(接地圧が小さくなったので)豆腐の表面は、破壊されません。しかしそのまま1昼夜おきますと、豆腐の水が抜けて豆腐の背が低くなります。これが圧密沈下といわれる地盤沈下です。地盤の破壊は起きないけれど地盤沈下が起こるということはあり得るわけです。
 今月はここまでで紙面がつきました。来月は、基礎、地盤の補強についてと、諏訪盆地の地盤沈下等について続きを書きますので、今月号よりは、ややおもしろいかなと思います。ややお楽しみにお待ち下さい。

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