
第ニ回●偏心している建物の接地圧
その前に、先月号の内容に追加したいことがあります。図A「歯のない下駄で雪面に立った時」を再掲します。

この図Aのままですと、接地圧は、0.7t/
その他にも不同沈下の問題から言っても、基礎の中心と、重心は、近いほど好しいと言えます。しかし、その為に建物の形を制限するのも、お客様の満足を得られません。 この場合は図Bの様に重心側のベタ基礎を拡げて打設するのが大変有効です。重心と基礎心が近づく上に、ベタ基礎面積が増え、接地圧が減少します。

●「諏訪盆地の地盤沈下」
〜盛り土による地盤沈下〜
先月号で触れました「圧密沈下」は、上部荷重が地盤に影響して起こります。この上部荷重として建物の代わりに盛り土をしても同じ様に「圧密沈下」がおこります。
地盤沈下の事例として良く引き合いに出される「諏訪警察署」などはまさしくその典型です。図Cの様に、建物は杭基礎によって強固な地盤に支持されていますが、建物周囲の敷地に行われた1mの盛り土が、築後4年間で、75cmもの圧密沈下をしてしまったのです。
私達は、一般に建物が杭によって固い地盤に支持されているのは理解しやすいのですが、その周囲の地盤が見る見る沈下していくのが盛り土に起因する事であるとは考えにくく、原因不明の地盤沈下に見えてしまいます。
実際、原因不明と言うべき地盤沈下も諏訪盆地には存在しますが、それについては次の項で。
「盛り土に依って地盤沈下が引き起こされる。」というのは、結構ショッキングな事実ですが、「より広範囲の荷重ほど寄り深い地盤に影響を与える」と言う法則があるので、諏訪警察署や、諏訪実高校などが殊に目立った現象を起こしたと考えられます。
●上部荷重に起因しない地盤沈下
前項のように盛り土、建物等の地盤上部荷重によって引き起こされる地盤沈下の他に、昔から耕している田や畑が徐々に地盤沈下することがあります。原因は、地下水の汲み上げ、掘削工事による地下水脈の遮断等による地下水位の低下だと言われています。表1を見て下さい。
諏訪盆地全域における地盤沈下は、平成4年〜9年の5ヶ年累計で、全国9位タイというランキングです。この現象の方が私達が思う地盤沈下のイメージと一致しやすいのではないでしょうか。
建物を建てたわけでも、盛り土をしたわけでもないのに土地全体が徐々に沈下している。困ったことではありますが、事が広域に渡り、進行が微少のため、今のところ目立った被害は報告されていないようです。
先程も述べましたが、この沈下の主たる原因は、地下水位の低下だと考えられています。但し、地下水位が下がればどの地でも地盤沈下を引き起こすものでは無く、軟弱地盤地域に於いて地下水位の低下がおきた場合に地盤沈下にストレートに結びつくとのことです。
なお諏訪盆地については、地下水位の低下ではなく「温泉の汲み上げに依る深層地下水の圧力低下が影響しているのではないかと考えられている」と、長野高専の阿部廣史先生は、おっしゃっておられます。
この様に人為に起因しない地盤沈下が発生している地域での地盤保証というのは、どんな具合にするのか興味深いところです。
●スクモ層
諏訪盆地の圧密沈下の最大原因は、「スクモ層」と呼ばれる「腐植土層」に有ります。圧密沈下は、土に含まれる水分が押し出されることによって生じると、先月号で豆腐を例にとって説明しましたが、この諏訪盆地スクモ層の含水比(土の中の、純粋な土と、水の比率)いくらだと思います?
答えはなんと、純粋土:水=1:3〜4(300%〜400%)が諏訪スクモ層の一般値であり、普門寺付近では、600%〜800%だそうですよ。「それって土ではなくて、水じゃないのか!」と言うのが、この数値を初めて聞いた時の私の感想でした。
●軟弱地盤対策
軟弱地盤対策として、最も効果がある方法は、「杭基礎」です。これは、基礎杭を、支持力のある固い地盤まで打ち込んで建物を支持するので、軟弱地盤を無視してかまわないのです。
しかし、一般の木造住宅で、杭基礎が行われることはまずありません。費用の問題もありますし、また杭打ち用の機械が、大変大がかりな物で、小規模住宅用地には乗り入れられないと言ったこともあります。その為、木造住宅の基礎は、軟弱地盤に何らかの手段によって直接支持させることになります。下記に代表的な対策を挙げます。

この他に先月号でも述べましたが、建物の軽量化、建物及び基礎の剛性のアップ、建物重心とベタ基礎図心の近接、等は工法の何れかに依らず効果のある方法です。
この対策の内で当社としては、浮き基礎改良工法に着目しています。理由は、1.当社のベタ基礎工法と相性がよいこと。2.建物荷重と同重量の土を排出すると、圧密沈下を検討する必要がないこと。3.比較的安価であること。と言った理由によるものですが実際には、計算値に基づきケース毎に対費用効果を検討し、どの対策を選択するか決めていくべきだと考えています。
どの工法を選択するにせよ、その根拠として、建物荷重、接地圧、地盤支持力、沈下量、重心と基礎図心の計算値が必要です(即ち、選択の根拠を明示する)。この中でも、地盤支持力、沈下量の計算は大変難しいものです。当社は、この計算については、「安藤構造設計事務所」に、地盤調査と共にお願いしています。計算はもちろん、その元となるデータの読みとりに深い信頼を寄せているが故です。
それから、忘れてならないポイントに「隣地への影響」が挙げられます。自分の建物は不同沈下を起こさなくても、補強の方法によっては、隣地を引きずり込んでしまうと言うことが起き得ます。これは、建物に限らず、擁壁等の施工によっても発生する可能性があるので、常に念頭に入れておかなければなりません。
●軟弱地盤と地震
軟弱地盤と地震の関係について触れます。軟弱地盤では地震の揺れの周期が長くなります。対して固い地盤では小刻みに揺れます。木造住宅固有の揺れの周期も長いものですから、軟弱地盤の揺れの周期と一致して、共振現象を起こし大変形することが考えられます。関東大震災の時、下町に被害が大きかったのはその為であったと考えられています。
この対策としては、地盤に対してではなく、建物に対し、良好地盤に建てられたものに比して1.5倍の耐震性を持たせる事とされています。しかし、浮き基礎にEPSを敷き込んだ場合には、地震力を5分の1程度に軽減させることが実験によって報告されていますし、イカダ工法も地震に対して有効と言われているます。昨年9月に発生した「十勝沖地震」は、泥炭層という軟弱地盤を襲いました。その時の被害状況について、「北海道住宅新聞」に記事が載っていたので以下にそれを抜粋します。
「軟弱地盤が原因と考えられる不同沈下は、十勝管内豊頃町では団地まるごと起きている例もあるが、隣家が傾いていないのに傾いている家もあり、単純ではない。豊頃町などの場合、軟弱な泥炭層が20〜30mにも及んでおり、古くは丸太をいかだ状に組んでその上に住宅を乗せた。池の上にハスの葉っぱを載せたようなこの構造は、実は地震に非常に強いことがわかった。
この地域で杭を打つ場合、20〜30m下の支持地盤まで届く杭を打つことは住宅では難しく、6〜7mの摩擦杭を打つことになるが、このケースは不同沈下を起こしている例が多い。杭が効いた部分と効かなかった部分があるためと考えられる。一方、いかだ組と同じ様な構造の耐圧板によるベタ基礎は不同沈下を起こしていない例が多い。揺れが収まったときには元通り泥炭層の上に浮かんでいるからだ。」
(北海道住宅新聞 04.1.15より抜粋)
この地では、浮き基礎改良工法は数少ないようでそれに対するコメントはありませんが、イカダ工法や、ベタ基礎が不同沈下に対し有効であったことが記載されています。地震時に建物を転倒させようと働く水平力と、地盤の液状化現象によって不同沈
下が起こったのだと推察されますが、接地圧の地盤支持力に対する安全率を高めておくと(イカダ工法、ベタ基礎)防御策として有効、と言うことだと思います。
■ ■ ■
『まとめに』
2ヶ月に渡り、地盤と基礎について書いてきましたが、「圧密沈下」という現象は、大変複雑で、難しい問題であると言うことを再度確認しました。しかし、いかに難しい現象でも、それをクリアーし、この軟弱地盤に安全な家を建てることが、地場のビルダーである当社の使命です。その為には、調査、計算が大事であることはもちろんですが、「地盤を知りつくしている、何百事例も見ているプロの目、判断が、いかに必要であり、安心であるか、」と言うことを改めて痛切に考えさせられました。
特集は、以上で終わりとしますが、今後も地盤、基礎工法等の新たな情報に耳をそばだてて、皆さんに報告していきたいと思います。どうもありがとうございました。
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