「盆の最中に阿弥陀岳に登る」
文 牛山与広


 8月14日お盆の真っ最中に阿弥陀岳に向かう、総勢7名(40代の男3名、女性1名、女子中学生2名+50代のワタクシ)である。天気予報では曇り若しくは雨であるが、牛山予報官(資格無し)によれば「根拠は全く無いが、午前中くらいは好天が予想される」との事である。
 舟山十字路5時30分出発。阿弥陀岳中央陵を目指し、左に御小屋尾根ルートの山道を見送りながら直進する。歩き始めて10分「もうそろそろ山頂ですか?」の声。約1時間後、目指す阿弥陀岳の山容が見えてくる。いつ見ても迫力に圧倒されるのである
「オー」とか「エエッー」「本当にあそこまで!?」と様々であるが、目指す峰とそのルートがはっきりしたので皆それなりに心の準備というか覚悟ができたようである。右に立場山への稜線左に御小屋尾根がはっきり見えてくる。ここから2時間ほどひたすらきつい登りとなる。
 30分行動、10分休憩のリズムでかなりゆっくりと登る。「天気も良いし、景色も良い、山はイイネー」「だけどキツイモノはキツイ」となってくる。第1の大岩を見上げる場所に来ると、南に権現岳と西岳の間から南アルプスが雲の間から見え、西は入笠山、守屋山の先に中央アルプスが見える。公式の天気予報に反し眺望に恵まれている。
 今回は3箇所十分注意して行動しなければいけない箇所がある。その1番目、大岩の右を巻いて登った後の数十メートルの沢登りとなる。慎重にクリアーし、中休止とした。
2番目の注意箇所、急登攀数十メートルが終わった瞬間、幅90Cmの馬の背になった稜線に出る。この稜線の先は切り立った崖である。沢筋を昇ってくる冷気が心地良い。ほとんどの人がここから10m、四つん這い状態となる。今までの樹林帯が終わり(つまり森林限界)山肌があらわになる。高山植物も多々有るが、詳しくその名前を言える人がいないので、中学生から「この花可愛いね、名前は?」と聞かれるがほとんど何も解らないので「ミヤマシラネ草だ!」(深山知らない草=インチキでたらめ名)と答える。従って何から何まで「ミヤマ赤とんぼ」「ミヤマ解らん草」最後には「ミヤマ知らね石」等となって行く。
 御小屋尾根との合流場所まで後20分位のところで膝が突然痛くなり、テーピングをする。これが瞬時に効いたのか最後まで持ち堪えてくれたが、効果無しだったらと思うとぞっとする。最後の注意箇所、鎖場と梯子の10mの岩越え、岩下りである。お手本を見せたつもりだったが、どうも参考にならなかったようだ。
 10時15分阿弥陀岳山頂に立つ。(通常より1時間は余分)となれば「とりあえずビール」「すぐにビール」「何はなくもビール」となる。予報どうり雲行きが怪しくなってきたが、東に主峰赤岳、眼下に赤岳鉱泉、行者小屋が見え隠れする。景色+山頂に立った達成感+酒類により会話も弾む。
「本当は、途中でやめて帰ろうかと思った」の声もあったが、「次は、1泊2日の山行きですな」「やっぱりエベレストですかね」「まあビールの後にワインはいかが?」「焼酎濃い目ですね」となる。それまでのやや冷たすぎる風が突然生暖かい風に変わった。
こうなると雨、雷などが心配される。まだ山頂に1時間も留まっていないので残念ではあったが「撤収!!」「すぐに、今すぐに!!」となり下山開始となった。
 「登って来た中央陵を下りたくない」の意見が多かったため、下山路は御小屋尾根を選択した。途中岩にツマズイて1m近く落下しそうになった父親を中学生の娘がナイスキャッチするといったハプニングもあったものの「膝が笑う」「膝が、、、」「膝が、、、」となるだけで無事出発地点に戻る事が出来た。40代女性と中学生女子はまだまだ動けそうな雰囲気であったが、男たちはほぼタイマー切れ状態である。車で『阿弥陀聖水』の水場に行き「美味い」「冷たい」としばし生き返った時を過ごす。
雨も雷もその気配はなく、静かに動いている雲の合い間から何筋もの光が阿弥陀南陵に続く立場山の山肌にあたり始め、「また行こう」「山はいいね」の言葉と、山の香りを乗せた心地良い風が吹き抜けて行った。


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