●地震力と耐震性
 

 先日、東北地方で、大地震がありました。(※2003年7月26日に発生した宮城県北部地震の事)大変な被害状況であり、1日も早い復興を心より願っています。また同時に、「私たちは、地震国日本に住んでいるんだ」と言うことを、改めて思い起こされもしました。
 「地震に強い構造」は、誰しも、家造りに際して重要なポイントの一つに挙げるだろうと思います。しかし、その割には、「地震力、耐震性等について、しっかりとした説明を聞いたことがない。」と感じている方が多いと思います。「S社は、地震に強いらしい。」「ツーバイフォーは、地震に強いと聞いた。」「I社は耐震等級3とうたっている」と言った風に、断片の情報は耳に入るのですが、「さて、耐震性能とは?」と自問してみると、「そういえば、胸に落ちるような説明は受けたことが無いな」と思い当たる方が大半でしょう。これは、ひとえにビルダー側に責任があります。 木造(ツーバイフォーも含む)2階建て以下の建築物(住宅)は、一般に構造計算を必要としません。建築基準法における、耐震検討は、床面積に相応する壁量が満たされていればOKです。この簡易計算法は、精算値と大きなギャップを生じる場合がありますが、それよりも、簡易計算のため、地震力と、耐震性の基本的な関連が解りません。「耐震性は、建築基準法をクリアーしてます。」で済まし、それ以上の説明をしてこなかった結果、お客様が耐震性の説明に不満を感じるような状況が作られてしまったのです。 当社もそのレベルに関しては他社と同様であったと反省してます。
そんな訳で、当社は、耐震性能等の精算値の検証は「安藤構造設計事務所」に、お願いしてきました。下の写真は、安藤所長自らが地盤測量を行っている時のをお借りしたものです。気さくな方ですが、「日本の建築構造の大家 宮沢健二教授」に従いて住宅性能評価のノウハウを学んだ、構造のプロ中のプロとも言うべき人です。
  今回は、一念発起して、この安藤所長の元、「地震力 耐震性能」をしっかり学び、耐震性の精算値計算をお客様に提供できるシステムを完成しました。その成果を聞いて下さい。


●地震力とは
 
  先ず、地震力とは何かを述べます。地震力とは、地震の際に建物に働く力(加速度)のことです。図1を見て下さい。地震は、地下に震源を持ちますから、図のように下から突き上げてくる力と、家を横に揺らす力とが同時に存在します。私の親戚は、伊丹に住んでいて、阪神大震災の時には、ベットから天井まで放り上げられたと言っていました。かくばかりに、下から突き上げる力も凄まじいものですが、従来から、この下からの力は、建物を横に揺らす力の約50%と言われています。ゆえに、先ず第一に耐震性能として問題とするのは、横に揺らす力の影響=水平力に依る変形 です。

ポイント1、建物の耐震性能評価上、地震力=水平力と考える。 続いて図2を見て下さい。

ポイント2、地震力は、1・2階各々に働く。 これはちょっと分かりにくいのですが、木造の場合、1,2階は、別々に地震力に抵抗すると考えます。受け手が別々に受けるので、かかる力も別々に計算します。

ポイント3、地震力は、建物荷重に比例する。震源地から同じ方向に同じ距離で有れば、地面の揺れ具合は一緒です。即ち、自宅と、隣家の地面の揺れ具合は同じですが、建物にかかる地震力は、各々の家の重さで変わってきます。図3を見て下さい。同じ竹に刺した重さの違う団子があります。一枚の板の上に立てて、板を左右に揺すります。大きい団子の串の方が折れやすい(串に働く地震力が強い)というのは、直感できます。同じ震度地域にある家でも、屋根が瓦なのか、ガルバリュウム鋼鈑なのか、壁が板張りなのか、サイディング張りなのか、等に依って、各家に働く地震力は異なるのです。建築基準法では、この建物の荷重の20%を地震力と仮定した時に構造躯体が損傷しないことを耐震性の基準としています。


●1・2階各々に働く地震力
 

 各家に働く地震力が異なるように、同じ家でも 各階に働く地震力は異なります。図4を見て下さい。1・2階にかかる地震力は、各階とも、その階の高さの1/2の位置に働くと考えます。各階とも地震力矢印の上部の荷重を背負います。この時1階に注目して下さい。1階の矢印より上部の荷重と言うことは、2階の荷重も背負うと言うことなのです。つまり、1階には、2階の約2倍の地震力が働くのです。「高い階の方が揺れが大きくて、危ないというように思っていませんでしたか?」、しかも1階は、大きい部屋が多く、壁が2階に比べ少ないのが一般的です。従って、耐震性の計算では、1・2階の壁バランスを考慮すれば、2階が問題になることは、滅多に有りません。

●地震力と、耐震等級


耐震等級1、2、3と言う表示をよく見かけるようになりました。2000年4月から施行された、品確法(※1)に基づく性能表示制度の中の1項目なのですが、1〜3へ数値が大きくなるほど耐震性能が高くなっています。耐震等級には、損傷防止と倒壊防止の2種類があります。両方とも耐震等級が同じで有れば、その耐震性能値は、全く同じですが、各々の対象とする地震の大きさは異なります。耐震等級1、を例にとると、耐震等級1の建物とは、震度5の地震の時、外壁が損傷しないし、かつ震度6〜7の地震に対して倒壊しない耐震性能を有する建物の事です。 下表にまとめてみました。
耐震等級 損傷防止 倒壊防止
等級1 数十年に一度の地震
(震度5)に対し、
外壁が損傷しない
数百年に一度の地震
(震度6〜7)に対
し、倒壊しない
等級2 1の1.25倍の地震に
対し損傷しない
1の1.25倍の地震に
対し倒壊しない
等級3 1の1.5倍の地震に
対し損傷しない
1の1.5倍の地震に
対し倒壊しない
先程も述べましたように、耐震等級1は、建築基準法の基準で、地震力を、建物荷重の20%として、構造躯体の損傷を検討します。耐震等級3は、その1.5倍ですから地震力を、建物荷重の、30%として、構造躯体の損傷を検討することになります。
(※2)
 以上今月は、「地震力とは何か?」という内容でした。けんかの相手をはっきりさせたと言うところです。この地震力を、来月迎え撃つのが、耐震力(耐震性能)と言う訳です。

次月号では、 「壁量が必要」「壁倍率とは?」「バランスの良い壁の配置とは?」「剛性率って?」「偏心率って?」と言った事柄を整理してお伝えしたいと思います。
「ご自分の住む家の耐震性能を確実に理解する。」すごく安心ではないですか。

※1 住宅品質確保促進法2000,4月施行 性能表示制度は、2000,10月スタート
※2 地震力の実際の計算に当たっては、固定荷重(DL) 積載荷重(LL) 地震地域係数(Z) 振動特性係数(Rt) 地震層せん断力分布係数(Ai) の正確な数値を入力しますが、今回は、地震力の概略を理解していただくために、詳細な説明は省かせて頂きました。
建物の変形と耐力壁
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