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●建物の変形と耐力壁
先月号では、「地震力とは?」と言う内容を説明させて貰いました。「耐震性能の検討における地震力とは、水平力の事であり、建物荷重に比例する」というののが、概略の結論でした。 では、建物に、水平力がかかるとどうなるか?図1を参照して下さい。 |
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| この様に建物にかかる水平力を、徐々に強くしていきます。すると、建物は、少しずつ変形をし始めます。「ミシミシ・・」と言った感じでしょうか。もう少し強く押しますと、窓ガラスが、変形に耐えきれず割れたり、外壁にひびが入ったりします。もっとどんどん押しますと、建物は、その限界の変形にまで達し、倒壊してしまいます。この様に、地震の際に、建物を損傷、倒壊せしめるのは、建物の変形の度合いによると言えます。この変形量は、各階の高さと(h)、変形の長さ(変位δ)の比で表します。 (層間変形θ=1/γ 変形率の事)ちなみに、外壁サイディングにひび割れが起きる限界のθは、1/120とされています。天井高が、2400だとすると、20ミリメートル=2センチメートルという事です。またモルタル外壁では、1/200 =1.2センチメートルの変位で、ひび割れが起こるとされます。 この様に水平力は、建物に変形を起こさせようとします。それに対抗して、変形を防ごうとする性能を建物に持たせる必要があります。この変形に対抗する力こそが、耐震力であり、この耐震力を担っているのが「耐力壁」と呼ばれる壁です(図2参照)。 |
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図2 耐力壁の役割![]() |
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| 「耐力壁」の定義は、簡略しますと、「地震力に対して対抗する耐力を有した壁」という意味で耐力壁以外には、計算上地震力を負担させません(※1)。また、その強さに応じて、「壁倍率」という数値が設定されています。「壁倍率」は、壁の仕様によって違いますが、0.5倍〜5倍までと決められています。例えば、「在来木造の筋違いの入った壁は、壁倍率2倍、」「ツーバイフォーにおける構造用合板の貼られた壁は、壁倍率3倍」と規定されています。 ●耐力壁と地震力 耐力壁は、ラクビーのスクラムの様に、全員で力を合わせて地震力に対抗します。しかし、図3.4のように、地震力に対して、足を縦に踏ん張る事が出来る耐力壁のみが力を合わせて対抗します。図5で見ると、X方向から来た地震には、X方向の耐力壁のみが対抗し、Y方向から来た地震には、Y方向の耐力壁のみが対抗します。地震は、どの方向から来るか分かりませんから、X,Y両方向に対して、各々耐震力を検討する必要があります。「斜めから来たらどうするか?」この場合は、角度によって、X、Y両方向で、地震力を分けて負担します。だから、斜めから地震が来た時だけは、1軒同階の耐力壁は、1つのチームにまとまって戦ってますね。また、地震力の項で記したように、「1階は、1階 」「2階は、2階」と言う具合に地震力に対抗しますので、同じX方向の耐力壁でも1,2階が協力し合うという事はありません。ちょっと例えは悪いのですが、1階の南北を守る部隊、東西を守る部隊、2階の南北を守る部隊、東西を守る部隊、の4部隊があり、各部隊は、援軍を当てにせず地震力と対戦し、1番弱い部隊が前線を突破された時に、建物に損傷が発生すると例える事ができます。 |
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●各階変形の計算 壁倍率1倍の耐力壁1mは、図6のように、200kgの水平加力に対し、1/150以下の変形率(1/γ)として計算する事になっています。(30%強の安全率を見ている) 各階地震力を計算で求めた後、各階X,Y方向の耐力壁総長(壁倍率1倍に換算後)を求めると、各階X,Y方向の耐力壁(1m)にかかる水平力が計算できます。 この1mの耐力壁にかかる水平力と、変形率(1/γ)は比例関係にあります。ゆえに、[水平力200kg 時、 変形1/150]を基準比として計算すれば、各階X,Y方向の変形率(1/γ)を求める事が出来ます。そしてこの建物の外壁がサイディングの場合、各階X,Y方向の変形率が1/120以下であれば、想定した地震力に対し(例えば耐震等級3)「外壁が損傷しない」と結論できるのです。 「壁量が多いほど地震に強い」と良く聞くのは、この各階の変形率(1/γ)の事を言っています(耐力壁量が多いほど変形しにくくなる)。品確法による性能表示では、この変形率1/γの精算解を要求していません。床面積に相応する耐力壁量を満たしていればよいとされています。つまり、「耐震等級3をクリアーしているが、その余裕率は検証できない」訳です。 この各階変形率(1/γ)は、建物荷重が軽いほど、耐力壁量が多いほど、小さな数値に(変形しにくく)なりますが、この計算の時点では、壁の配置は問題としません。壁の配置バランス以前に、変形率1/γの数値基準をクリアーする事(耐力壁の量を満たす事)が、まず必要とされます。 ●壁のバランス良い配置 (剛性率、偏心率) 同じ耐力壁量であっても、その配置バランスを整えると、建物全体の耐震性能は、アップします。(逆にバランスが悪ければダウンします) 耐力壁の配置バランスは、2つの視点から検討せねばなりません。 A.1,2階のバランス B.各階平面におけるバランス |
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| ●剛性率 偏心率の調整 ここまで述べて来たように、耐震性能には、1/γ(層間変形)Rs(剛性率)Re(偏心率)の3要素があります。自由設計の場合 この3点の中では、1/γ の確保が最も難しいと言えます。「どうしてもここの壁を抜きたい」「広々とした空間が欲しい」と言った要望は、自由設計としては、ごく当たり前であり、耐震性を表に出し、お客様の希望を制限するのは、ビルダーとして心苦しいものです。それでも、当社としては、お客様にお願いして、何とか耐震等級3をクリアーできる壁量を頂くようにしています。というのも、この γ さえ確保できれば、Rs 、Re は、お客様に我慢をして貰わずに、ある程度調整する事が可能だからです。 前段で述べましたが、耐力壁は、1階のX方向 Y方向 2階のX方向 Y方向の4部隊に分かれ、その4隊が、それぞれ 1/γの基準をクリアーせねばなりません。そして、その建物全体の耐震性能は、最も弱い部隊の 1/γの数値によって決定します。この1/γを増強する事が出来ずRs 、Re の値も基準をオーバーしているとき、困ってしまいますが、実は、他の部隊の耐力壁を弱める と言う方法によって、Rs 、Re を基準内に調整する事が、可能なのです。せっかくある耐力壁のいくつかを放棄する、壁倍率を下げると言った方法に依って調整するわけで、まさしく逆転の発想ですが、この耐震性能3要素の関連をよく考えると、理にかなった方法であると言えます。このRs 、Re の調整は、略算法ではなしえませんので、ここに精算解を求める最大のメリットがあると言えます。 |
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●まとめに いつものことですが、退屈な数字のオンパレードにお付き合い下さり有り難うございました。当社は、この特集を期として、耐震性能の検証計算書を、見積提出時に添付する事としました。耐震という重要な課題について、正確な検証が行えるようになったことを社の一歩前進として素直に喜んでいます。その計算ソフトの作製、及び、本稿チェックに、多大な助言、指導を頂いた安藤構造設計事務所 安藤所長に感謝すると共に、本特集の講評をもらい〆とします。 講評 先日 工学院大学宮沢教授と歓談する機会を得ました。先生曰く「これから阪神大震災の社寺建築の損傷も調査したいと思っている」との事。とても我々は、そこまで考えが及びませんが、既存住宅の耐震診断も、いたずらに不安をあおり、高額で、過剰な補強に導くのでなく、適切に行っていきたいものです。 釣りが、ヘラブナに始まり、ヘラブナで終わるように、建築構造は、木造に始まり木造に終わります。今回、クリエイティブホームさんが、耐震性能に関する精算解検証システムを作り上げたことは、大変価値有ることだと思います。今後も、ますますご努力下さい。 安藤構造設計事務所所長 安藤君夫 |
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※1)性能表示では、準耐力壁という考えを導入しています。 ※2)地震力が働く高さ(各階高の1/2)ところを、スライスした平面の重心 ※3)剛芯と記す場合も有り |
完成見学会のご案内
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3月下旬 南箕輪村
3月下旬 北安曇郡池田町
4月 下諏訪町(予約制)
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