第三回「ゼロエネルギーハウス完結編」
小川新作
「へいへいほう」8月号掲載
いよいよ最終回「ゼロエネルギーハウス完結編」です。前回までの所で、給湯、暖房を含めて、52,410円の減額に到達しましたが、給湯暖房費減額目標の55,000円には、2,590円不足です。これを、暖房費から削りたいのですが、その前に、先月号の光熱費データに再登場願います。
●データA

照明・家電+調理 給 湯 暖 房
73,700円    32,900円 15,100円

年計A 121,700円(夜間料金の90%を給湯費と計算)
●データB

照明・家電+調理 給 湯
暖 房
71,900円    48,100円 17,700円

年計B 137,700円(夜間料金の90%を給湯費と計算)
●データC

照明・家電+調理 給 湯
暖 房
70,800円    48,100円 37,300円

年計C 156,200円

桁外れに低い暖房灯油量

 再度このデータを眺めて見て、大変驚くべき数値といえば、データA・Bの暖房費コストです。各々15,100円17,700円という額で、灯油消費量にすると、319L(A)、374L(B)になります。1シーズンに使う暖房用灯油が、400L以下と言うのは本当に少ないですよね。でもけっして我慢してお暮らしになっているわけではありません。高性能の断熱がなされた住宅では、あまり暖房の灯油消費量を抑えますと、本来の住宅性能を発揮できず、「いわゆる、宝のもちぐされ」状態になる心配が有りますから、データを頂きましたお客様に「大丈夫ですか?」と老婆心ながらお尋ねしたところ、ご両家とも「大丈夫ですよ。暖かく暮らしています。」とのご返事でした。
 実は、年間暖房費のシミュレーションには、厳密なルールがあり、当社でも、そのルールに従って、お客様に、Q値計算と共に、年間暖房費計算を提出しています。住宅の断熱性能、その地域の平均気温、日射取得、生活発熱等を加味して計算するのですが、データA・B共シミュレーション値の約3分の1の実消費量です。ところが、当社の建物ならどのお宅でも3分の1かと言いますと、そう成りません。電気蓄熱暖房器による暖房のお宅、温水パネルヒーターによる暖房のお宅(このケースは、当社では2例しか有りませんが)の場合は、シミュレーション値の約70%が実消費量です。(データCでも、Q値=1.4と1.8の差を考慮すると、フル電化住宅シミュレーション値の70%になります)FFストーブによる暖房のお宅だけが、シミュレーション値の30%〜50%の実消費量に安定します。何故なのでしょうか?

制御の良い器具は暖房費が安い?

 当社では、「暖房器具の制御性の違いに原因があるのではないか」と推論しています。高気密高断熱住宅の暖房システムは、従来、「熱源が分散している程良い」「制御能力は、あまり敏感でなくて良い」というふうに考えられていました。24時間どの部屋も均一な温度環境を作ると言う高気密高断熱住宅の目標から見れば、まさしく正論です。 しかし、データA、Bの驚くべき灯油消費量、そしてお客様の居住満足感は、これはこれで一つの事実です。どう考えればよいか悩んでいましたが、大胆な推察をしました。
 「制御性の良い暖房器具は、シミュレーション結果より大幅に少ない燃料費で済む。それは、人間が本来持つ温度への適応能力が、より働くからではないか。」と言うものです。「適応能力云々」はしっかりした根拠が有るわけではありませんが、現実に暖房燃料費は予測値の50%以下になっています。ですから推論の正、否はどうであれ、実際の暖房燃料費を推測するに当たり、制御性の良い器具は、シミュレーション暖房費の低減率を高めて良いと考えます。
 エアコンもFFストーブ以上に制御性が良いと言えますので、この結論にのっとって前回計算した暖房費を、70分の50に低減します。計算しますと暖房電気料22,510円が16,080円に減ります。この時点で、データCよりー58,840円の減額になり、後一息となりました。

日射取得と日射遮断

 当社のゼロエネルギーハウスは、屋根に注ぐ日射を太陽光発電に利用しますが、窓から入る日射も有効利用を考えます。(ダイレクトゲインと言います)当社の他シリーズは、「日射は遮断する」という基本的な考えで統一されています。「高気密高断熱住宅は夏暑い」という悪評判を嫌ったものですが、ゼロエネルギーハウスでは、熱源として利用します。
 具体的には、サッシのガラスを、南面だけ日射透過の良いものに変えます。サッシの断熱性能は変わりませんが、日射透過率は、39%と64%の差が出ます。
 「夏はどうするんだ」という疑問がわきますが、下図の様に、南面に限れば、ベランダをはね出すという条件をクリアーすれば、夏は日射を遮断し、冬は透過させるということが可能です。
 このエネルギーも金額に換算すると3,000円〜5,000円に該当しますが、今回は考慮しません。(ゼロのシリーズに限らず、南面にベランダの跳ね出しているプランでは、この方法を取り入れられます。ただし、ベランダ床の照り返しには、緑色のマットを敷く等の対策が必要です。)




ゼロエネハウスの断熱性能

 当社は、次世代省エネルギー基準1地域対応、2地域対応、2通りの断熱仕様をを有しています。実際に建築いただいた住宅の平均は、1地域対応では、Q値≦1.4、2地域対応では、Q値≦1.8 となっています。先程計算したゼロエネハウスの暖房費は、Q値=1.4の設定で計算してあります。ちなみにこれをQ値=1.8の設定で行うといくら暖房費が余分にかかるかと言いますと、「約4,600円」です。
 すなわち、1地域仕様で、ゼロエネハウスが出来れば、2地域仕様では「4,600円ハウス」が出来るわけです。イニシャルコストと、ランニングコストの関係から言えば、2地域仕様でゼロエネハウスにチャレンジするのも立派な挑戦ですが、ゼロエネハウスの原点に立ち返れば、当社の施工している最高の断熱仕様でチャレンジするべきだと思いますので、ゼロエネハウスの断熱仕様は、次世代基準1地域対応とします。

照明・調理・家電費の削減 

 現時点で、給湯暖房コストから計ー58,840円の減額になっています。目標低減額ー61,200円まで後ー2,360円です。最後のシェイプアップに挑みましょう。 後一息のー2,360円ですが、実はすごく大変です。というのも、この項では、みなさんが良く知っている省エネ方法(例えば無駄な明かりは消すとか)、あまり聞いたことがない方法、とかを一覧に書き上げますが、データC家庭の奥様は、そのほとんどを実行しています。(もちろん旦那さんも協力してます。忘れていません)
 つまり、データCにおける照明、調理、家電費の計70,800円は強い省エネ意識を持たなければ普通はオーバーしてしまう額なのです。そのつもりで続きをお読み下さい。

 照明 
 照明は、まず器具の選定が大事です。みなさんは、「ルーメン」という言葉を聞いたことがありますか、照明器具の発光量を示す単位で、lm/w(1Wの電力で、何ルーメンの光を発するか)と表示します。よく見ると、照明器具のカタログには、器具ごとにこの数値が書いてあります。1997年のこの数値を2003年まで16%UPするという改善目標が、1999年に出されました。下に表示してある省エネマークは、それの達成率を示しています。
 ちなみに現在最高効率の器具は、110〜120lm/w位、また蛍光灯とはいえ、低効率率のものでは40lm/w位の器具もあります。同じ明るさを確保するのに、互いに蛍光灯でありながら使用電力が約3倍と言うことになります。
 白熱灯は、蛍光灯の約4分の1の明るさだといいます。白熱球にルーメンという単位を使って良いのか勉強不足ですが、白熱灯は約15lm/w位だと思われます。現在は、電球色の蛍光灯もありますから、まずは蛍光灯かつルーメン数値の大きい器具を選定の候補にするのが、省エネの1だと思います。もちろん無駄な明かりはマメに消しましょう。




 冷蔵庫
 冷蔵庫の省エネ性能も、凄い勢いでUPしています。10年前の機種では、年間使用電力が、1,400KW位が標準であったものが、現在では、年間200KWと言う製品が現れています。近年の製品で有れば、全て省エネと言うわけではありませんから、年間使用電力を良くチェックする必要があります。

 炊飯ジャー
 炊飯はタイマーを用いて夜間電力を利用するのがお得。ジャーにて保温するより、ごはんを冷蔵庫に入れて、食べるときに電子レンジを利用する方が消費電力が少なく、かつ美味しいと言うことです。

 暖房便座
 これもかなり電力を消費します。当社の建物では、便座が冷たくて困ると言うことはありませんから暖房便座をOFFにする、もしくは温度を低くする。
また使用しないとき便器の蓋を閉めてください、便座、温水の両方に省エネ効果があります。

 TV・ビデオ
 この場合の省エネの大敵は、待機電力です。(見ていないときに消費される電力)最近の機種は、この点の改善が著しいのですが、一般にTVより、ビデオの方が、待機電力が圧倒的に大きいので、せめてビデオの主電源は、マメに点け消しします。

 ポット
 保温を電力にて行う物は、電力消費が大きい。沸かし機能は付いていても保温は電気に頼らない物が良い。

 洗濯機・食洗器
 タイマーを利用し、夜間電力にて大半を行う。
◆◆◆

 以上のように細かなポイントなのですが、データCのお宅では、この工夫がほとんど為されています。
 減額できる可能性としては、2点のみです。先ず、その1として、照明器具の効率が当時より16%はUPしているので、改善の余地が10%期待できます。C宅の照明器具使用時間調査から、年間電力料19,700円の10% 、ー1,970円の減額ができます。
 また、その2として、冷蔵庫が、年間消費電力300KWの物でしたから、最省エネタイプとの差額ー2,500円が減額できます。
 以上の結果から、減額総額は、ー63,310円となり、年間光熱費計92,890円、太陽光発電額95,000円にて、やっとゼロエネルギーハウスが誕生しました。

最後に…
 長々と細かい数字にお付き合いいただき、お疲れさまでした。まとめに皆様にご理解願いたいポイントを2点上げます。 

1.ゼロエネハウスの現実性  
 当社ゼロエネハウスは、机上の空論でもなければ、客寄せパンダでもありません。お客様が、ゴーを出してくれれば、即、実現します。
 実際現在でも、暖房にFFを用い、エコキュート・太陽光発電3KW搭載という、「年間3万円ハウス」が3棟建築途中であり、9・10月に完成見学会をお願いしてあります。
 当社では、このゼロエネハウスを、特殊な建物ではなく、主力商品としていきたいという強い意志を持っています。(高気密高断熱住宅も10年前は、特殊視されていたのですから)他社のゼロエネルギーハウスと、その現実性を是非比較して下さい。

2.客社合同のプロジェクト  
 今回の特集でお分かりのように、ゼロエネルギーハウスは、建物だけでは完結しません。お客様が、本気で省エネに取り組んでもらうことが、必須条件です。 
 お客様と当社が、一緒に同じ事を目指す合同プロジェクトのパートナーとなって初めて達成できる事だと考えています。

 「当社を信頼できるパートナーとして、ゼロエネルギーハウス実現に一歩を踏み出していただける方を心からお待ちします。」

 この呼びかけを、3ヶ月に渡ったこの特集終わりとさせていただきます。ありがとうございました。

 
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3月下旬 南箕輪村
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